052/078   PAG01172  山野辺 裕二(CRES  コンセンサス)どうやって形成するか?
       88/03/14 22:39

 昨年末の新聞でみたのですが、87国内十大ニュースを一般の人に選んでもらった
ところ、50%以上の人が「石原裕次郎死去」をその中に入れたのだそうです(ひょっ
とすると「中にいれた」のでなく「トップに挙げた」のかもしれません。うろ覚えで
調査不足のため)。この数字には驚かされました。日本も平和なもんです。そういえ
ば彼に国民栄誉賞を贈ろうとした人もいましたっけ。
 さて、彼の死去をマスコミはなぜか大きく伝えたのですが、このとき私はこんなこ
とを考えていました。もし、彼の病気が臓器移植によって治ったとしたら。そして臓
器移植推進派がこのことをうまく利用してマスコミに働きかけていたら、世論は臓器
移植支持に大きく傾き、容易に臓器移植再開の突破口を作れたのではないかというこ
とです。

 脳死や臓器移植の論議で出て来る決まり文句が、「まだ国民のコンセンサスが十分
形成されていない」というものです。しかしコンセンサスというものはどうやって形
成されるのでしょう。原発誘致なんかでよく聞く公聴会や説明会でしょうか。国会で
の厚生大臣答弁? 学識経験者の意見書? すべてNoですね。私の考えは2つです。
 1つは既成事実。体外受精の場合がそうです(体外受精に関してはそのうち別に取
り上げようかと思っています)。日本で体外受精児の第1号が生まれたとき、母親は
世間を気にして家に帰れないほどでした。しかしその後も続々と子は生まれ、特に副
作用などもなく、不妊に悩む夫婦のうちある部分が子宝に恵まれる方法として社会的
にも認知されてきたと言えるでしょう。
 2つめがマスメディアでしょう。それもテレビドラマなどではなく、ノンフィクショ
ンのドキュメントでないといけません。臓器移植しか生きのびる方法のない患者が日
本に生まれた不幸を呪いながら死んでいく模様、突然の事故でわが子が脳死状態となっ
た親の苦悩などを生々しくとらえたテレビ番組などを作れば、臓器移植を推進する力
となるでしょうし、もちろん逆の番組を作ってブレーキをかけることもできます。さ
らに、そのモデルがどこの誰かもわからないおじさんであるより、いたいけな子供や
往年の大スターなどであれば効果は倍増すると思います。
 事態は既に、誰が、いつ、どの様な手段で世論の誘導を図るかという段階に来てい
るような気がします。かつてのグリコ森永事件の犯人のように、マスコミを巧妙にに
利用できる知恵があれば、コンセンサスを作るのも壊すのもかなり計算できると思い
ます。
 マスコミによる世論の誘導なんて言うと聞こえが悪いのですが、私は内容と手段に
よっては行なうべきだと思います。たとえば受動喫煙の害を強調することで人前での
禁煙が当然だという社会を作ること、フロンガスの害を啓蒙してスプレーなどへの使
用を早くやめさせることなどです。臓器移植や脳死についてはコメントしにくいです
ね。

バイオエシックスを語れる方がいらっしゃいましたら、ぜひこのフォーラムでお話い
ただきたいと思います。       PAG01172 CRES

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