医療ジャーナリズムの諸問題


 現代は医療費が上昇を続けるとともに、高度情報化社会でもある。医療ジャーナリズムにはさまざまな問題が秘められている。医療ジャーナリズムの医療経済学的効果、社会的効果、受療率への影響など、今後明らかにしていくべき課題であろう。

 ジャーナリズムの力は、時として保健、医療分野に大きな影響力を持つ。以下にその例を列挙してみよう。

 バイアグラ。今一般でもっとも有名な薬である。医師の処方箋を必要とし、保険がきかない薬である。この薬が日本で認可されるまでのスピードの速さは、マスコミの力なしに語れないことは誰もが認めるであろう。
 低容量ピル。これもマスコミが役所を動かしたのかもしれない。性病の増加を懸念する声もあることを銘記せねばならない。

 東海村の臨界事故にまつわる報道は、庶民に放射線と放射能の違いをもっともよく理解させる機会となった。この被害者の治療で使われた臍帯血移植、末梢血幹細胞移植なども一躍有名となった。この事件は、従来キャンペーンを続けてきた骨髄移植の登録者増加に一役買うか、むしろ減少に手を貸すことになりはしないか、注目である。

 結核の集団感染の発見にも、マスコミの果たす役割は小さくないであろう。

 果たしてどのような報道が役所を動かすのであろうか。もっとも顕著なのはバイアグラに見られるように、放置すると副作用のような健康被害が広がったり、不当な利益を得る者が出たりする場合である。むしろこれは報道による悪影響を役所が恐れたためといえる。皮肉にも報道を医療に生かすという目指すべき方向とは逆である。

 報道の傾向がどうかも気になる。短期に集中的に報道したほうがよいのか、継続して取り上げたほうがよいのかである。掘り下げるには後者のほうが望ましいが、あきやすい大衆を引き付け続けることができるかが問題かもしれない。

 バイアグラの例でわかるように、インターネットの普及による国境を超えた情報革命が医療に影響を与える時代になった。従来、ジャーナリズムのメディアとしては、新聞・雑誌の活字とテレビの影響を考えればそれほど間違いはなかった。しかし、今後はインターネットを無視できない。ここで重要なのはインターネットの情報はジャーナリズムではないということである。

99.12.27
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 医療事故の報道が多くなった。ジャーナリズムの習性について考察する。

 最初に重大なミスが報道される。それに倣って雨後の竹の子の如く、何でもかんでも報道される。実は医療ミスでないものも、家族が提訴したと言うだけで、ミスのように扱われる。そして、連日医療ミス(のような)事例の報道であふれる。マスコミは報道に飽き、やがて減っていくだろう。積極的な情報開示は報道をあふれさせ、やがてマヒさせる効果があり、結果として早く収束に向かわせることができる。しかし、その後のマヒ状態の中で、伝えるべき事例をきちんと発見できるかはマスコミの手腕によるだろう。

2000.6.21



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