9歳くらいの女の子のやけどの跡の治療のため、一卵性双生児の姉の皮膚を移植
して治ったという発表がありました。皮膚は角膜や腎臓と違って、たとえ親子兄弟
から移植しても拒絶されます。一卵性双生児間だけはその例外です。
私は質問に立ちました。
「皮膚を提供する健康な姉の同意はどう取りつけたのですか? その子に判断がで
きたのですか?」
答えはあいまいで「姉は妹のことをかわいそうに思っていたのは確かです……」と
お茶を濁していました。
私は形成外科の医師でしたので、「手術しなければ命が危ない」などという事例
はあまりありません。私の恩師からは「3歳以上は本人の意見も聞くこと」といつ
も言われていました。親がいくら手術を希望しても、本人が「イヤ」と言えば見送
りということもときどきありました。
インフォームドコンセントが一般的になってきたこの頃ですが、子供の意志が尊
重されているかはまだ疑問が残っていると思います。