組織的に電子カルテを改竄?

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金沢医大のサイトに公式発表が (2001/11/15)

報道のまとめ

NHK 2001/10/10 18:33 http://www.nhk.or.jp/news/2001/10/10/grri840000007fdg.html

リンク切れに備えて引用します

金沢医大 組織的にカルテ操作
 石川県の金沢医科大学病院が、今年6月に行われた国などの調査で、医療費の不当な請求が発覚しないよう、患者のカルテの内容を組織的に書き加えていたことが、病院の関係者の証言でわかりました。
 金沢医科大学病院では今年6月下旬に厚生労働省と石川県の指導が入り、少なくとも50人の患者について今年1月から3月分のカルテの内容と請求された医療費が合っているか調査を受けました。病院関係者によりますと、一部の患者の医療費を不当に多く請求していたことから、調査のおよそ2週間前にカルテの内容を書き加えるよう病院から指示されたということです。この指示は病院長名ですべての診療科に対して文書で出され、医師を集めてカルテに追加記載するよう求める内容となっていました。この指示を受けて複数の医師が、コンピュータで管理された電子カルテの診療内容などを、医療費の請求と一致するように過去にさかのぼって書き足していたということです。

 (医師の証言:音声は変えています)病院長の名前で病院を挙げてやっているわけですから「ちょっとぉ、これまずいんじゃないの」という意識は実際持っていたとは思うんですけれども、それをやらなきゃ、あの、この病院で生きていく自分たちの立場すら危なくなるんじゃないかな。
 
 これについて厚生労働省は、医療費を請求した後にカルテを書き足す行為は国の規則に違反する疑いもあり、病院から詳しく事情を聞きたいととしています。一方金沢医科大学病院の内田健三病院長は、「以前からカルテに記載漏れが見受けられたので、補足的に書き加えるよう、日頃から指示をしていた。記載漏れを隠すつもりも、不正請求の事実もなかった」と話しています。

 

NHK 2001/10/11 06:35 http://www.nhk.or.jp/news/2001/10/11/grri840000007fol.html

カルテ操作マニュアルを作成

 石川県の金沢医科大学病院で、医療費の請求に関する国の調査が行われた直前に、患者のカルテの内容が組織的に書き加えられていた事が明らかになりましたが、この際にコンピューター端末でカルテを操作して書き加えるための マニュアルが医師に配られていたことがわかりました。この問題は今年6月、金沢医科大学病院で厚生労働省と石川県の調査が入る直前に、一部の患者の医療費を不当に多く請求していたことが発覚しないよう、病院の指示を受けて複数の医師がカルテの内容を書き加えていたことが、病院関係者の証言で明らかになったものです。更に別の関係者の話で、コンピュータで管理された電子カルテを過去にさかのぼって書き加えるための手順を記したマニュアルが、調査のおよそ2週間前に配られていたことが新たにわかりました。NHKが入手したマニュアルは、病院長名の緊急文書の扱いで各診療科の科長などに宛てて出されていまして、「操作するカルテの日付を間違えないこと」などと注意を促した上で、手順が細かに記されています。

 (医師の証言:音声は変えています)医事課の係の方が総出で出てきていただいて、直接ご指導を受けながらですね、「カルテのここのボタンを押してこういう風にすると、こう立ち上がる」と。実際我々はそういうふうに、何ヶ月も前のカルテをですね、さかのぼって追記できるという、そういうシステムがあるっていうこと自体知らなかったわけなんですよね。

 大学側では、「マニュアルはカルテの記載漏れがあったときのために以前から作っていたもので、国の指導に備えて作成したわけではない」としています。

 

北陸放送 http://www.mro.co.jp/ 

10月11日(Thu) 19:22更新
■診療費疑惑を全面否定
内部告発により診療費をめぐる疑惑が持ち上がった金沢医科大学病院が、きょう会見を開きました。
内田 健三病院長は疑惑を全面否定した上で内部告発で疑念を抱かれる事態となったことについて陳謝しました。
きょうの会見は今年6月、国と県が合同で行った金沢医科大学病院の調査をめぐりカルテの書き加えなどによる医療費の不当請求があったとする内部告発に対し、開かれました。
しかし内田 健三病院長内田病院長は、去年10月に導入した電子カルテシステムの不慣れから医療費の書き加えがあっただけと疑惑を全面的に否定しました。
その上で、内部告発については国などの調査が入る直前の自主的な点検が一部の医師の誤解を生んだと陳謝しました。
この疑惑に対し県では、きょう午後、病院側から事実関係の報告を受けています。

 

 

石川テレビ http://www.ishikawa-tv.com/ 2001/10/11

■事後にカルテ記入
金沢医科大学病院で、本来は診療の際、遅れなく記入を終えるべきカルテに事後処理的に追加記入していたことが明らかになりました。金沢医科大学病院では今年6月、厚生労働省などによるカルテや診療報酬の請求についての調査が入ることになった際、内田健三病院長が、医師にカルテの不備を補足するよう通知を出していました。金沢医科大学のある医師は追加記入をしたのは投与した薬の名称しか記載していないカルテにその説明を書き加えるなど医療費には反映しない内容だと話し病院側でも医療費の水増し請求などは絶対にしていないとしています。医師法では、カルテは診療の際遅れなく記入するよう定められ、この問題の事実関係を調べている石川社会保険事務局では調査で不備が見つかるのを避けようとしたと受け止めざるを得ず、適切さを欠く追加記入もあってはならないことだと話しています。

 

 

北陸朝日放送  http://www.hab.co.jp/

医科大でカルテ書き加えか (11日)
金沢医科大学病院(石川・内灘町)で診療報酬を請求した後にカルテを書き加えていたことが明らかになりました。金沢医科大学病院では、石川社会保険事務局などによるカルテのチェックなどを控えた6月中旬、病院長名で院内すべての医師に診療報酬請求書とカルテの内容が一致しているか自主点検し、記載洩れなどを書き加えるよう指示しました。11日に会見した内田健三病院長は「記載洩れがないか点検しただけ。」と話し、指摘された不正請求疑惑を否定しました。石川社会保険事務局では事実確認を進めています。(19:29)

 

 

毎日新聞-石川(2001/10/13)   http://www.mainichi.co.jp/area/ishikawa/news/20011013k0000c017001000c.html (リンク切れのため以下引用)

[ニュースかわら版]金沢医科大学病院の省令、保険法違反 

 

 ◇診療報酬請求後、カルテに追記 国と県、病院側に報告求める 

 

 金沢医科大学病院(内田健三院長)が今年6月、国と県が行う診療報酬の適正検査の直前、病院長が担当医に対し、市町村や健康保険組合への診療報酬を請求した後のカルテの点検を指示し、一部のカルテが追加記載されていたことが分かった。カルテに加筆することは診療行為に遅滞なく記載することを義務付けた省令や各種保険法に違反しており、石川社会保険事務局や県が事実関係の報告を病院側に求めた。 【田中義宏】 

 

 同病院の説明などによると、病院は昨年10月、担当医が端末で診療行為などを入力する電子カルテを導入。今年2月、カルテの点検を始めた結果、一部に不十分な記載が見つかった。

 

 そこへ6月、石川社会保険事務局と県が合同の検査「特定共同指導」を実施することになったため、院長が特に検査対象50人分について「十分に説明できるよう」点検を指示。この結果、一部のカルテが加筆された。

 

 内田院長は会見で「電子カルテの操作の未熟、端末の能力不足で、記載が不十分だったため」と釈明。その上で「点検や補正は適正化が目的で、追記するかどうかは医師の判断に任せた。違法かどうかの判断は国に委ねたい」とした。

 

 これに対し、同社会保険事務局は「カルテに後から追加が必要ということはその診療報酬の請求自体が適正ではなく、省令や各種の保険法などに触れる。事実確認をし、指導していきたい」としている。

 

  ◇  ◇  ◇ 

 

 病院側は、電子カルテについて「入力後48時間で確定保存され、更新、変更、削除ができず、補足した記載も別に保存される」とシステムの信頼性を強調し、不正請求はあり得ないとした。

 

 しかし、カルテが患者が知らないところでいつでも加筆できるなら、診療行為への客観的判断、患者へのアカウンタビリティー(説明責任)が損なわれ、保険医療制度の信頼性が揺らぐ。

 

 病院は正しいカルテの記載に基づく適正な請求はもちろん、法に沿った運用、医師の研修の充実などでシステムを改善をすべきだ。

 


意見

問題点

・厚生労働省の調査前に組織的にカルテに追記したこと

・電子カルテシステムは、後から改竄できない、もしくは追記したことが記録に残るように設計されている。毎日新聞石川によれば、 「入力後48時間で確定保存され、更新、変更、削除ができず、補足した記載も別に保存される」仕様だったらしい。今回は、この病院の電子カルテシステムが、何ヶ月もあとからカルテに追記できるような 機能を元々持っていたということがわかった。

・また、追記の記録が残ったとしても、厚生労働省の調査前にはそれを行おうとする病院幹部が存在することもわかった。

 

疑問

・厚生労働省の調査で調べるカルテは調査の直前にならないとわからないはず。事前にわかっていたのか? 

・上記がわかっていなかったとしても、問題となる部分の予想は可能。では問題のカルテの抽出はどうしたのか。それは電子カルテのない施設ではかなりの労力を要し困難なはず。ここで電子カルテが威力を発揮したのか?

答え(10/16) 毎日新聞石川によれば、 院長が特に検査対象50人分について指示を行ったということで、事前にわかっていたらしい。第二の疑問は穿ちすぎでした。

 

 

意見

・レセプトを出した後にカルテに追記するのは、事務的な観点からはカルテの改竄であると考える。ある医師が記載忘れに気付いて追記するのならわかるが、病院長の指示で組織的に追記するのは改竄としか言えないのではないか。


感想

・電子カルテはひとくちに言えば改竄が容易であることが証明された。

・電子カルテシステム上でいくら真正性を確保しても対外的意味は少ないことがわかった。

・世間的には「電子カルテは不正請求の道具になる」と解釈されると思う。

・私も「電子カルテを不正請求の道具にする医療機関がでる」と思う。


リンク

どう進めるカルテ開示 (7)電子カルテが拡げる可能性 医療への患者参加・選択を促す

(Medical Tribune 1998年12月17日 (VOL.31 NO.52) p.22)

「カルテの改ざん防止策として,入力後48時間以降に訂正すると,該当個所に自動的に線が引かれ,だれが訂正したかを入力しないと保存できないシステムになっている。」

 

日経コンピュータ 「第5回情報システム大賞」中規模部門部門賞  (2001/2/26)
 金沢医科大学/金沢医科大学病院 「原本性」を確保しカルテを電子化 情報共有とコスト削減を推進

 

国際モダンホスピタルショウ2001 企画展示 資料

IT時代の医療の方向性を探る―開かれた医療と電子カルテ

 

[ニュースの読み方] 電子カルテの承認 改ざん、悪用にどう対処

(Mainichi Interactive)

 
金沢医科大学 診療報酬不正請求報道についての本学の見解

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